男鹿島行程図

【時速48.9km】
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出港前の船はドロドロとアイドリングを続け不快な煙を吐き出し続けている。
船室は当然快適なはずだ、しかしやはり船に乗るのであれば海を直に見ていたいものだ。

従って船尾に陣取って排気ガスに燻されるのもやむ得ないといえる。
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やがて『坊勢汽船』と胸に縫い取りされたツナギのおじさんが船の縁(ヘリ)をするすると渡ってきて埠頭にゆわいつけられていたロープを外した。

出港だ。

船のサイドが泡立つ。
岸から離れるためのサイドモーターがあるのだろうか、ジワジワと岸からはなれる。


そして、岸までが泳ぐにしてもやや面倒という距離まで離れた頃に重い音とともに船がゆっくりと回りはじめる。
メインのスクリューが回り始めたのだろう。

低い音と、振動を感じているとたちまち船の速度が上がり始める。
―――時速48.9km

この速度で走るにしてはかなり大きいと思われる船が海の上をガタンガタンと一定の上下動をしながら駆け抜けていく。

ものすごい向かい風を感じる。
風は湿度で重い。
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しばらくすると船室からカブスカウト※がわらわらと踊りだしてきた。

そこらに置いてある釣りさおやアイスボックスを蹴っ飛ばしたりしながら、飽くことなく海を眺めていた。
きっとこの海が彼らの海のイメージとして長く残るのだろう。


船は港と停泊する船の間をすり抜けて島へと向かう。
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※カブスカウト…カブスカウトはボーイスカウトの年少組織、写真に写っているのは正確にはビーバースカウトで幼稚園向け、カブスカウトは小学生、ボーイスカウトには中学生と年齢層で対応している。その後シニア(高校)、ローバー(大学)が続く。



【上陸】

しばらく無言で(猛烈な風と延々と続く低いエンジン音で口も重くなる)海を眺めていると、水平線上にすぐに影が浮ぶ。

暗いシミはなかなか大きくならず、横にだけ徐々に広がっていく。

近づいてくるにつれてその理由がわかった。
島はその上部が霧に覆われていた。

水平線と霧までの高さ数十メートルだけが見える。
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どっしりと重い天気、しかし船に揺られている事と、その船が思いのほかの高速であった事でやや興奮気味に船を下りた。
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島の港は静かだった。
コンクリート製のよくある桟橋に船は着いた。

上陸すると誰かがクラゲを見つけて歓声をあげる。

そして桟橋を渡りきると不思議な事にほのかに晴れ間が見えた。

霧に覆われて見えた場所からはほんの数百メートルしか距離は変わらないはずだが、男鹿島の湾には陽がさしていた。


【パリダカ】
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島に着くと宿からの向かえが来ていた。

き〜さんが25年前にバイトに入ってから毎年通っている宿だ、1年ぶりの再会を喜ぶ親しげなやり取りが続いている。

他のメンバーはクラゲを写真に取れるかどうかについて議論していた。
とりあえず、デジタルカメラでも撮ってみる。


き〜さんと宿のひとが桟橋から陸へと歩き始めていた、残る3人(つまり俺と友さんとまんさくさん)も陸への橋を渡る。
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右:離れていく船、続いて坊勢島へと向かう。


桟橋のそばにとまっている車はどれもひどく土で汚れていた。
パリダカールラリーに出ている車のアップを思い出しながら、さらにナンバープレートもあまり付いていない事に気が付いた。

宿の人はあとで「この島にはどろぼうと警官が居ない」と教えてくれたが、真相はよくわからない。
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宿の人が手配してくれた車に乗り込む。
車はガタガタと揺れながら(桟橋のあたりは舗装が無かった)動き始める。

道路に入ってほっとしたのも束の間、車は黄土のなかへとつっこんだ。

次々に現れる石の壁や土塁を避けて右へ左へと、車は揺られる。
もちろん断続的に車は揺れ、車の周りにはもうもうとした土煙が上がる。
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男鹿島は伝統的な石切り場で大阪城の石垣用にも巨石がいくつも切り出されていった(このときに切り出されたままで大阪まで運ばれなかった石が20世紀の末に新大阪に運ばれモニュメントになっている)。

その後、近代になって、埋立地を造成するたびにこの島からは石や土が切り出されてきた歴史がある。

歴史があるとは知っていたが、それが島の各地に点在し、それを横切らなければどこにも移動できないとは知らなかった!

カルチャーショックというのはどういうところにも転がっているものだが呆然としたまましばらく我慢しているとまた舗装された道へと入った、

するとそこが今回の目的地"青井荘"であった。

10時21分、わずか5分ほどのドライブ。
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<男鹿島偵察記もくじ>
全編一括版
分割版
1:出発 2:上陸 3:海 4:青井荘のオススメ 5:青井荘の設備紹介 6:探検 7:脱出